わたしのとっておき
『ホメーロスのイーリアス物語』
バーバラ・レオニ・ピカード/ 作 高杉 一郎/訳

作品概要、あらすじ
バーバラ・レオニ・ピカード/ 作 高杉 一郎/訳(岩波少年文庫no.610)
10年にわたるトロイア戦争末期。ギリシア軍総指揮官アガメムノーンと、若き英雄アキレウスは仲たがいし、アキレウスは戦線を退く。しかし盟友パトロクロスを失い、アキレウスは復讐に燃える。智将オデュッセウス、トロイアの王子ヘクトールらの誇り高き死闘を描く、ギリシア最古の叙事詩。読みやすく原詩に忠実な再話。
(岩波書店webサイトより)
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小学校の図書室で、挿絵がきれいだったので借り出して読み始めたら、夢中になってしまったことを思い出します。その本は講談社版世界名作全集という児童向けシリーズの一冊、『ホメロス物語』でした。『聖書物語』や『日本神話』より、なぜかこれに夢中になってしまったのです。古い本ですから、新しい本を紹介してみました。今思えば、子どものころ、いわば0の状態で聖書物語を読み、ホメロスの世界に夢中になったことで、後に大学で古典古代を学ぶようになる下地ができていたのかもしれません。一冊の本が人生を変える典型的なお話でしょう(?)
小学高学年から中学以上。もしまだホメーロスを一度も読んでいなかったら、どなたでも。
将来世界で活躍したいと考えている子どもたちに読んで欲しいと思います。西洋の子どもたちは必ずホメーロスを読んでおり、常識になっているからです。物語の概略と主な登場人物を知っておくと、欧米の文学作品、絵画、彫刻を鑑賞するとき全然違ってきます。「教養」の第一歩と言えるかもしれません。と、難しいことを考えずとも、とにかく小学生、中学生のころに夢中になって読んで、楽しめる一冊です!(ほかにローズマリ・サトクリフ『トロイアの黒い船団』(原書房)もおすすめです)


青山学院大学学長
阪本 浩

仙台市出身。青山学院大学文学部史学科卒業、東北大学大学院文学研究科西洋史学専攻入学。1982年東北大学文学部助手、1985年青山学院大学文学部史学科専任講師、1990年同助教授、1999年同教授昇任。
学内では、2008年青山スタンダード教育機構副機構長、2014年史学科主任、2016年文学部長、2017年副学長、2019年~2023年、学長。
専攻は古典古代史、主な訳書に、ウィルケン『ローマ人が見たキリスト教』(ヨルダン社1987年、共訳)、エイドリアン・ゴールズワーシー『アントニウスとクレオパトラ』(白水社2016年)、同『古代ローマ名将列伝』(白水社2020年)、マイケル・クリコフスキ『後期ローマ帝国史I:帝国の勝利』(白水社2022年)がある